良き暇つぶし。

気負わず、楽しいなって思いながら、暇をつぶせるようなことをつらつら書こうと思います。

【牧寛之さん】TOBが出た会社に、数日後に現れる人

こんにちは。

ここ数日、TOBの記事を続けて書いていたら、何回か牧寛之さんが登場してるので改めて調べてみました。

 

何者か

株式会社バッファロー、証券コード6676の代表取締役社長執行役員CEOです。ルーターとか外付けHDDのバッファローですね。お世話になっております。うちのもバッファローです。

基本情報はこちら。

バッファロー(2026年3月期)  
売上高 1,173億円
営業利益 92.3億円
純利益 80.7億円
ROE 18.3%
自己資本比率 60.2%
従業員 963人

ROE18.3%です。よその会社に資本効率がどうこうと言う人はたくさんいますが、自分の会社で18%出しているってすごいよなぁ。

持ち方が3層

EDINETで個人名義の大量保有報告書を追うと12社出てきます。ただ、それだけ見ていると実像の半分しか見えませんでした。下の表は、いま保有が残っているものです。

誰の名義か 持っている会社
株式会社メルコグループ バッファロー30.17%、ベースフード32.93%、シマダヤ31.94%、セゾンテクノロジー20.00%
牧寛之さん 個人 アールビバン39.93%、BASE 20.55%、バッファロー17.01%、シマダヤ13.93%、歯愛メディカル10.14%、ツインバード6.98%、クラウドワークス6.01%、フロイント産業3.70%
MBFアクセラレーション ベースフード6.74%
公益財団法人牧誠財団 バッファロー4.22%

個人名義の12社のうち4社が、この表に出てきません。メドピア、パンチ工業、アライドテレシスホールディングスの3社はすでに0%になっていて、ベースフードは個人名義が0%になってMBFアクセラレーションに移っているためです。

メルコグループというのは旧社名を株式会社マキスといって、2023年6月に商号変更しています。バッファローの筆頭株主です。ここが持っているセゾンテクノロジー20%は、個人名義のリストには出てきません。抜けた3社も足して重複を除くと、関わっている上場企業は13社になります。多分ね。

(ちなみに比率の数字は出典によって3通り。バッファローだと、大量保有報告書のグループ合計が48.71%、有報の大株主一覧の牧寛之名義が17.01%、大量保有報告書の提出者本人分が13.19%。分母も基準日も違います。以下は出典を書き分けます。)

買い方の型

買い上がり方が速いんですよね。

会社 期間 比率 推計取得単価
ベースフード 2024年10月16日〜11月15日 8.36%→33.44% 268円→408円
メドピア 2025年5月19日〜7月2日 5.42%→27.84% 698円→733円
フロイント産業 2025年7月17日〜8月4日 8.44%→28.07% 1,086円→1,140円

1か月前後で30%近くまで積む。ベースフードは単価が268円から408円まで上がっているので、自分で押し上げながら買っています。

で、この日付を別のものと並べたら、型が見えました。

TOBが出た会社に、数日後に現れる

会社 TOBの発表 牧氏が入った日 間隔 到達した比率
メドピア 2025年5月15日 MBO開始 5月19日 4日 27.84%
フロイント産業 2025年7月15日 MBO開始 7月17日 2日 28.07%
歯愛メディカル 2025年8月7日 エア・ウォーターがTOB 8月14日 7日 10.14%
アールビバン 2025年9月1日 MBO開始 9月2日 1日 39.93%
ツインバード ジャパネットのTOB提案に会社が反対(8月31日) 9月1日 1日 6.98%

全部そうでした。会社を非公開化する話が出た直後に入ってきて、まとまった塊を握る。

このうちメドピアと歯愛メディカルは、TOBが成立して上場廃止になっています。メドピアが2025年10月17日、歯愛メディカルが12月15日。メドピアではTOB成立の翌日に牧氏の保有が0%になっているので応募したように見えます。

保有目的の欄に書いていることも、これで意味が変わってきます。BASEの届出だとこうです。

筆頭株主として、支配権プレミアムの獲得と享受を通して、株主総利回りを最大化することを保有目的とします

支配権プレミアムというのは、会社の支配権が動くときに株価に乗る上乗せ分のことです。会社が売られるときに、その分を取りにいく。だから売られると決まった会社に入るのが合理的なんですね。書いてある通りのことをやっている。

TOBには買付予定数の下限が設定されることが多くて、非公開化まで持っていくなら3分の2くらいが要ります。そこに20%や30%の塊が現れると、届かなくなる。だから買い手は、値段を上げるか条件を変えるかを迫られます。

1,670円が1,900円になるまで

いちばんきれいに出たのがここでした。アールビバンのときですね。

時期 何が
2025年9月1日 MBO開始。買付価格1株1,670円
2025年9月2日 牧氏が15.58%で大量保有報告書を提出
2025年10月28日 応募1,947,759株。下限2,987,200株に届かず不成立
2026年7月10日 再びMBOを発表。買付価格は1株1,900円、買付総額は最大113億円

TOBが始まった翌日に入って、下限を割らせて止めた。そして1年近く経って、230円上乗せした値段で戻ってきた。13.8%の引き上げです。

牧氏の推計取得単価は1,677円でした。1,670円では売らない、という意思表示に見えます。そして今は39.93%まで積んでいます。ここまで持っていると、2度目のMBOも同じ理屈で止められます。

フロイントではこうはならなかった

同じ戦法が通じなかった例もあります。攻防が細かく開示に残っていて、こっちのほうが読み応えがありました。フロイントのとき。

時期 何が
2025年7月15日 伏島社長が設立した株式会社友によるMBO開始。1株1,085円、下限7,499,301株(44.30%)
7月17日 牧氏が8.44%で大量保有報告書
7月28日 保有割合11%超が判明したと報じられ、株価が反発
8月4日 牧氏が28.07%に到達。推計取得単価1,140円
8月7日 買付予定数の下限を変更
8月27日 買付期間を延長
9月29日 再延長。下限を7,408,300株から7,408,200株へ
10月14日 さらに延長。買付株数を12,393,713株、下限を6,727,900株に引き下げ
10月28日 牧氏が3.70%まで減らす
10月29日 MBO成立

買い手が取った手は、値上げではありませんでした。下限を下げることです。7,499,301株から6,727,900株まで、3回に分けて引き下げている。期間も3回延ばして、最終的に61営業日を超えました。

1,085円という値段は最後まで動いていません。牧氏の取得単価が1,140円なので、この水準だと売っても損が出ます。それでも10月28日に3.70%まで落としている。

値段を上げさせるつもりで入って、上がらないまま押し切られた。買われる側にも打ち返す手があるということですね。

原資はどこから来ているのか

ここが調べていていちばん驚いたところです。

メルコグループが持っているバッファロー株、大量保有報告書に書かれている取得資金は5億670万円です。いま3,620,279株を持っているので、1株あたり約140円になります。

そしてこの数年、こう売っています。

時期 売った株数 売却単価(加重平均)
2023年8月 650,000株 3,100円
2024年7月 1,271,000株 3,500円
2025年3〜5月 2,294,000株 2,097円
2025年9月 555,000株 3,500円

簿価140円の株を、2,000円から3,500円で売っている。ざっと計算すると130億円規模になります。

長く持ってきた自社株を現金化して、そのお金で他人の会社を買っている。そういう絵に見えます。ちなみにバッファローの大株主の3位には、公益財団法人牧誠財団が4.22%で入っています。

いまいくらになっているのか

推計取得単価と、2026年9月1日の終値を並べます。株価は動くので、まぁ大体ってことで。

会社 名義 推計取得単価 9月1日終値
バッファロー メルコグループ 約140円 3,165円 約22倍
アールビバン 個人 1,677円 1,878円 +12.0%
セゾンテクノロジー メルコグループ 1,999円 2,009円 +0.5%
ベースフード メルコグループ 301円 273円 ▲9.3%
BASE 個人 416.6円 365円 ▲12.4%
クラウドワークス 個人 797円 667円 ▲16.3%

本業の持ち株が22倍で、それを原資に買ったほうは半分くらいが含み損。おもしろい並びだなと思いました。

アールビバンは1,900円のMBOが出ているので、それが通れば1,677円に対して13%の利益になります。ここがいちばん狙い通りに進んでいる案件ですね。

ベースフードについて一つだけ書いておくと、2026年5月に個人名義からメルコグループ名義へ18,030,000株が移っています。個人の届出に記載された取得資金は79.0億円で1株438円、メルコグループの届出は54.3億円で1株301円。同じ株数で金額が違います。取引の性質は開示から読み取れなかったので、事実を並べるだけにしておきます。

いま2件同時に動いています

ここ数日の話です。

ひとつはBASE。この会社には牧氏が2025年に自分でTOBをかけていて、いま20.55%を持っています。推計取得単価は416.6円。そこにSBIホールディングスが1株340円で20%を取るTOBを始めました。牧氏の取得単価より76円安いので、応募すれば損が出ます。

もうひとつがツインバードです。ジャパネットが1株800円で完全子会社化を提案して、8月31日にツインバードの取締役会が全員一致で反対しました。その翌日の9月1日に、牧氏が6.98%の大量保有報告書を出しています。

ツインバードの届出には、同じ日に訂正報告書も出ていました。直したのは1か所だけで、「筆頭株主として」の7文字を消しています。ツインバードの筆頭株主は双栄の13.38%なので、6.98%では2番手なんですよね。他社で使っている文面をそのまま出して、直したように見えます。

消さなかったほうにこう書いてあります。

少数株主保護と株主価値向上に資すると客観的に判断され、ゆえに発行者の株主の意思を確認すべきと提出者が考える提案については、重要提案行為等を行うことがあります。

株主の意思を確認すべき提案があれば動く、と書いてある。そしていまツインバードには、株主に諮られないまま取締役会が断った800円の提案があります。株価は9月1日の終値で670円です。

と、ここまで書いた翌日にジャパネットが提案を取り下げました。9月2日です。そして10ページの見解文書の中に、こう書いてあります。

なお、2026年9月1日付で、牧寛之氏よりツインバード株式に関する大量保有報告書が提出されておりますが、当社は同氏と面識がなく、同氏による株式取得と、当社が提案していた本公開買付け及び今般の本提案の取下げとは、一切関係がございません。

名指しで否定しています。取り下げたのはツインバード取締役会が反対したからであって、牧氏は関係ない、と。

わざわざ書くということは、そう見た人がいたということでもあります。

これは何をしている人なのか

非公開化に横入りして値段を吊り上げる人、という面もありますが、少数株主にとっては悪い話ではないんですよね。MBOというのは経営陣が自分の会社を安く買う構図になりがちで、そこにその値段では売らないと言う人が現れると、価格は上がる方向に動きます。アールビバンでは実際に1,670円が1,900円になった。応募した一般株主も同じ値段をもらえます。

まぁ勝ったり負けたりなのも見てて楽しいですね。

それにしても、ルーターの会社の社長がこれをやっているというのが、どうにも飲み込みにくいです。本業でROE18%出しながら、片手で13社の株を買って、MBOを止めたり止められなかったりしている。時間配分どうなってんだろ。

<参考>

  • 牧寛之氏が提出した大量保有報告書および変更報告書(EDINET、2023年〜2026年9月1日、109件)― 保有比率、株数、取得資金、保有目的の文面、取引の日付。1株あたりの取得価額は取得資金を保有株数で割った推計値
  • 株式会社メルコグループ(旧・株式会社マキス)が提出した大量保有報告書および変更報告書(EDINET、38件)― バッファロー、シマダヤ、ベースフード、セゾンテクノロジーの保有比率と取得資金、売却株数と売却単価
  • 株式会社バッファロー 有価証券報告書(2026年3月期、docID S100YGR6)― 役員の状況、大株主の状況、財務数値
  • アールビバンのMBOに関する報道(初回:2025年9月1日開始、買付価格1,670円、下限2,987,200株、応募1,947,759株で不成立。再MBO:2026年7月10日発表、買付価格1,900円、買付総額最大113億円、公開買付者Orsay。日本経済新聞、M&A Onlineほか)
  • フロイント産業のMBOに関する報道(2025年7月15日開始、公開買付者は株式会社友、買付価格1,085円、下限7,499,301株。8月7日下限変更、8月27日・9月29日・10月14日に期間延長、最終的に買付株数12,393,713株・下限6,727,900株。10月29日成立。M&A Online、やさしい株のはじめ方、株探ほか)
  • メドピアのMBOに関する報道(2025年5月14日発表、公開買付者NMT、5月15日〜8月7日、成立。10月17日上場廃止)、歯愛メディカルに関する報道(2025年8月7日、エア・ウォーターが387億円でTOB、12月15日上場廃止)
  • 株探「フロイントが反発、TOB期間中にBUF牧社長の保有割合11%超が判明」(2025年7月28日)
  • 株価は株探による2026年9月1日15時30分時点の終値
  • EDINET DB(Cabocia Inc.)― 大量保有報告書の時系列、大株主、財務数値の取得

※本記事は個人の見解であり、推察を含みます。当然特定の金融商品をお勧めするものではないので、投資判断は自己責任でお願いします。