良き暇つぶし。

気負わず、楽しいなって思いながら、暇をつぶせるようなことをつらつら書こうと思います。

【壱番屋(7630)】PBR1.25倍の親が、5.61倍の子を売る

こんにちは。

きょうはココイチやってる壱番屋の話。

パリパリチキンカレー派です。

親会社のハウス食品グループ本社が売却するかもしれない、という報道が出ました。8月31日、日経電子版です。株はストップ高。

最近長いから短めに。

概要

報道の中身としては、

ハウス食品グループ本社が壱番屋の売却を検討していて壱番屋は株式非公開化も検討している。すでに複数の投資ファンドが買収に名乗りを上げていて、近く買収希望者から法的拘束力のない提案を募るとみられる、

と。

ハウス食品グループ本社は壱番屋株を51.00%、8,141万1,000株持っています。ていうか投資ファンドどこやねん。

否定していない否定リリース

同じ日に、両社が「当社に関する一部報道について」を出しています。この手のリリースは全文が数行なので、両方引きます。

ハウス食品グループ本社。

当社は、企業価値及び株式価値の向上に向けて、壱番屋の非公開化を含むあらゆる選択肢の検討を行っておりますが、現時点において具体的に決定した事実はございません。

壱番屋。

当社は、企業価値向上に向けて、非公開化を含めた様々な検討を行っておりますが、現時点において決定している事実はございません。

両方とも、検討していると認めています。決まっていないだけよってことですね。

 

壱番屋はどんな会社か

数字をば。

2月期 売上 営業利益 営業利益率 純利益 ROE
2022年 450億円 28.6億円 6.3% 29.2億円 9.6%
2023年 483億円 36.1億円 7.5% 25.4億円 8.3%
2024年 551億円 47.2億円 8.6% 26.9億円 8.7%
2025年 610億円 49.3億円 8.1% 31.7億円 9.9%
2026年 655億円 47.2億円 7.2% 25.6億円 7.9%
2027年(予) 726億円 50.0億円 6.9% 27.2億円 8.6%

売上は5年連続で伸びていて、450億円から726億円の見込みまで来ています。業績不振で売られる、という話ではないです。

ただ営業利益は2025年2月期の49.3億円がピークで、そこから横ばい。利益率は8.6%から6.9%へ下がる見込みになっています。売上は伸びるが利益はついてこない、という形ですね。

ハウス食品にとっての壱番屋

親会社側から見ます。ハウス食品グループ本社の2026年3月期のセグメントです。壱番屋は外食事業にあたります。

事業 売上 営業利益 営業利益率
香辛・調味加工食品 1,268億円 128億円 10.1%
海外食品 629億円 33.6億円 5.3%
外食(壱番屋) 654億円 33.9億円 5.2%
健康食品 163億円 15.3億円 9.4%
その他食品関連 454億円 9.05億円 2.0%

売上ではグループ3,170億円の2割を占めます。利益でも15%くらい。小さくはない。いや、結構でかいけどな。

ただ利益率が5.2%で、本業のルウやスパイス(10.1%)の半分です。グループ全体の利益率を下げる側はにいる。

親より子のほうが高く評価されている

市場が両社をどう見ているか。

  壱番屋 ハウス食品グループ本社
時価総額 1,783億円 3,683億円
PBR 5.61倍 1.25倍
PER(予) 65.5倍 21.1倍
ROE(予) 8.56% 5.90%

子会社のPBRが5.61倍で、親会社が1.25倍。ROEも子のほうが上です。

ハウス食品グループ本社の時価総額3,683億円のうち、壱番屋51%分の時価は909億円になります。

つまり親会社の値段の4分の1が、子会社の持ち分でできている。残りの2,774億円が、外食を除いた売上2,516億円ぶんの事業につけられた値段です。

帳簿では157億円、市場では909億円

もう一段いきます。

壱番屋の株主資本は307.2億円です(2026年2月期)。ハウス食品はその51%を持っているので、持ち分としては157億円になります。

ところが市場での値段は909億円。差が752億円あります。

ハウス食品グループ本社の2026年3月期の純利益は73.6億円でした。752億円というのは、その10年分です。

もちろん、これがそのまま売却益になるわけではありません。連結の帳簿価額やのれん、税金で変わりますし、51%をまとめて売るときに市場価格で売れるとも限らない。ただ、桁として何が起きるかは見えます。

親会社のほうのROE

 

3月期 売上 営業利益 純利益 ROE
2023年 2,751億円 167億円 137億円 5.02%
2024年 2,996億円 195億円 176億円 6.02%
2025年 3,154億円 200億円 125億円 4.27%
2026年 3,170億円 182億円 73.6億円 2.51%
2027年(予) 3,225億円 175億円 170億円 5.90%

2026年3月期の純利益が73.6億円まで落ちて、ROEは2.51%。売上は3,170億円あるのに、です。

PBR1.25倍というのは、この数字を見れば納得がいきます。純資産に対して2割5分しか上乗せがついていない。資本効率を上げろという圧力がかかる水準です。

外食はお金を食う?

もうひとつ、セグメント別の設備投資。

3月期 外食事業の固定資産増加額
2024年 24.3億円
2025年 45.3億円
2026年 47.4億円

2年で倍近くになっています。グループ全体で見ると、香辛・調味加工食品の65.5億円に次いで2番目です。

利益率5.2%の事業が、投資では2番目に食っている。店を出す商売なので当然といえば当然なんですが、資本効率で経営を見る立場からすると、ここは気になるところだと思います。

11年前のこと

ハウス食品が壱番屋を子会社にしたのは2015年です。TOBで持ち分を19.55%から51.00%に引き上げました。買付価格は1株6,000円でした。

当時の狙いは、原材料から店までを自社グループで持つことだったと報じられています。ルウが売れなくなって外食に流れていく。だったら外食も持とう、と。

それから11年で、話が反対になりましたね。

この間に東証が親子上場を問題視するようになって、資本効率やPBRを説明する義務が重くなった。外部環境のほうが動いた、という面が大きいのだと思います。

これから見るところ

  • 買い手が誰になるか。報道ではファンドの名前が出ていますが、外食大手が来る可能性もあります。買い手によってココイチの姿は変わりそう。
  • 売り方。市場で少しずつ売るのか、TOBで一括なのか、非公開化まで行くのか。壱番屋が非公開化を含めて検討していると書いているので、そこが有力か。
  • 値段。いまの株価は1,099円で、PBR5.61倍です。ここにプレミアムを乗せるとなると、買い手にはかなり高い買い物になります。
  • ハウス食品が入った現金を何に使うか。自社株買いなら株価に直接効きます。

調べる前は、業績が悪くなって切られる話かと思っていました。開けてみたら5年連続増収の会社で、むしろ親のほうがROE2.51%で苦しんでいた。

ココイチのカレーが変わるわけではないので、食べる側としてはどうでもいい話ではあるんですが。ただ、次に行ったときにトッピングの値段が上がっていたら、ちょっと思い出すかもしれません。

<参考>

  • ハウス食品グループ本社株式会社「当社に関する一部報道について」(2026年8月31日)― 引用した文面はここから
  • 株式会社壱番屋「当社に関する一部報道について」(2026年8月31日、適時開示)― 引用した文面はここから
  • 日本経済新聞電子版(2026年8月31日)― ハウス食品グループ本社が壱番屋の売却を検討している旨、複数の投資ファンドが名乗りを上げている旨、近く法的拘束力のない提案を募るとみられる旨。朝日新聞、ロイター、Bloombergほかの報道もあわせて参照
  • 両社の業績・セグメント・貸借対照表はIRBANK(EDINET提出書類に基づく。壱番屋 E03329、ハウス食品グループ本社 E00462)― 売上、営業利益、純利益、ROE、株主資本、セグメント別売上と営業利益、固定資産増加額
  • 株価・時価総額・PBR・PERは株探およびIRBANK。株価は2026年9月2日15時30分時点の終値(壱番屋1,099円、ハウス食品グループ本社3,927円)、時価総額とPBR・PERは同時点前後の値
  • ハウス食品グループ本社の壱番屋株式保有比率51.00%・81,411,000株は株探の大株主情報
  • 2015年のTOB(買付価格1株6,000円、所有割合19.55%から51.00%へ)はストライク、M&A Online、日本経済新聞ほかの報道による

※本記事は個人の見解であり、特定の金融商品をお勧めするものではないので、投資判断は自己責任でお願いします。