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SAFS(スイスアジア)とは?経営権奪取も辞さないシンガポール発ウルフパック型ファンド

またまたアクティビスト紹介。

ここのCIOが投資先の東京コスモス電機の社長に就任するという面白い事態。

 

 

日本企業に投資するアクティビストをGeminiと紹介するシリーズです。

その他アクティビスとは?みたいなことも含めてこちらでまとめています。

 

それではさっそくいきましょう。

 

 

 

 

スイスアジア・フィナンシャル・サービシズ(SAFS)と日本市場におけるアクティビズムの構造的転換:Global ESG Strategyの台頭と門田康人氏による経営関与型アプローチの全貌

序論:日本株式市場における「沈黙」の終焉と新たな株主像の出現

かつて日本の株式市場において、株主とは「静かなる支援者」であり、経営陣の方針に異を唱えることは稀有な存在であった。しかし、2010年代以降のスチュワードシップ・コードの導入やコーポレートガバナンス・コードの改訂、そして東京証券取引所によるPBR(株価純資産倍率)1倍割れ是正要請といった制度的変革を経て、その風景は劇的な変貌を遂げている。この変革の波に乗り、またその波を自ら増幅させる形で登場したのが、シンガポールを拠点とする金融サービス企業、スイスアジア・フィナンシャル・サービシズ(Swiss-Asia Financial Services Pte. Ltd.、以下「SAFS」)のプラットフォームを活用するアクティビストファンド群である。

とりわけ、同社のプラットフォーム上で運用されるファンド「Global ESG Strategy(GES)」と、その運用を主導してきた門田康人(もんでん やすと)氏の活動は、従来のアクティビズムの枠組みを超越する特異性を持っている。彼らは単に株主還元や自社株買いを要求する「ファイナンシャル・バイヤー」の領域に留まらず、経営陣の刷新を迫り、場合によっては自らが取締役として経営の中枢に乗り込む「ハンズオン(経営関与)型」のアプローチを鮮明にしている。2024年から2025年にかけて発生した東京コスモス電機における現職取締役全員の解任と門田氏の社長就任劇は、日本のアクティビズム史における「クーデター」とも呼べる象徴的な事件として刻まれた 1

本レポートは、SAFSという組織の特殊な構造、その中で展開されるGESの投資哲学、そして門田康人氏というキーパーソンの背景を多角的に分析し、彼らが日本市場にどのようなインパクトを与え、今後どのような変革をもたらそうとしているのかを包括的に詳述するものである。

 

第1章 スイスアジア・フィナンシャル・サービシズ(SAFS)の組織構造とプラットフォーム機能

「スイスアジア」という名称がメディアに登場する際、それはしばしば単一の攻撃的な投資ファンドとして描写されるが、その実態はより複雑で洗練された金融エコシステムである。SAFSの本質を理解するためには、まず彼らが提供する「プラットフォーム」としての機能を解剖する必要がある。

 

1.1 独立系運用会社のためのインキュベーション・ハブ

2004年に設立されたSAFSは、シンガポールに本社を置き、香港にも拠点を有する金融ホールディングスカンパニーである 3。同社の中核事業は、自己資金による投資ではなく、独立系のファンドマネージャーやウェルスマネージャーに対して、ファンド運営に必要なライセンス、コンプライアンス、リスク管理、バックオフィス機能を提供する「ホスティング・プラットフォーム」の運営にある 4

シンガポール金融管理庁(MAS)からキャピタル・マーケッツ・サービス(CMS)ライセンスを取得しているSAFSは、このライセンスを傘下のファンドマネージャーに「貸与」する形をとることで、個々のマネージャーが独自に複雑な許認可を取得するコストと時間を削減させる 6。これにより、優れた投資アイデアを持つが組織力を持たない「一匹狼」的なファンドマネージャーや、特定の戦略に特化したブティック型ファンドが、SAFSの傘下で迅速にファンドを立ち上げることが可能となる。

 

1.2 プラットフォームとしての法的構造と開示の実態

日本の大量保有報告書やEDINET(開示システム)において「スイスアジア・フィナンシャル・サービシズ」が提出者として記載されるのは、このプラットフォーム構造に起因する。形式上の保有主体や法的な届出人はSAFSとなるが、実際のエクイティ(株式)の売買判断や議決権行使の意思決定は、その傘下にある個別のファンド(例えばGlobal ESG Strategy)の運用担当者(この場合は門田氏など)が行っている 2

この構造は、外部からは「スイスアジア」という巨大な一つの意志が動いているように見える一方で、内部では全く異なる戦略を持つ複数のファンドが並列して存在することを意味する。例えば、SAFSのプラットフォーム上には、日本株アクティビズムを行うファンドだけでなく、世界のバッテリーサプライチェーンに投資する「Arrowhead New Energy Fund」や、リキッド・オルタナティブ戦略をとるファンドなど、多岐にわたるファンドが存在している 9。したがって、SAFSの保有銘柄リストを見る際は、それが単一の戦略に基づいているわけではなく、集合体としてのポートフォリオであることを理解しなければならない。

 

1.3 投資家層とネットワーク

SAFSのプラットフォームには、アジア地域の超富裕層(HNWI)やファミリーオフィスが資金を拠出している。特筆すべきは、日本株アクティビズムを行う門田氏のファンドに対して、米国の著名なファミリーオフィスである「The Observatory」が資金を提供している点である 2。The Observatoryは、コカ・コーラ社に買収された「ビタミンウォーター」の創業者に関連する資産管理会社であり、彼らが日本のアクティビズムに勝機を見出していることは、海外投資家視点での日本市場の割安さとガバナンス改善余地の大きさを示唆している。

 

第2章 実行部隊「Global ESG Strategy」の投資哲学と戦略

SAFSのプラットフォーム上で最も注目を集めているのが、「Global ESG Strategy(GES)」と称されるアクティビストファンドである。その名称とは裏腹に、彼らの活動は伝統的な「E(環境)」や「S(社会)」への配慮よりも、徹底的な「G(ガバナンス)」の改革と、財務的な価値の解き放ちに主眼が置かれている。

 

2.1 「ESG」という名称の戦略的意図

「Global ESG Strategy」というファンド名は、現代の資産運用業界における巧妙なポジショニングを表している。世界的なESG投資の潮流の中で、多くの機関投資家はESGを重視せざるを得ない状況にある。GESは、「資本効率の悪さや経営の非効率性は、企業の持続可能性(サステナビリティ)を損なう最大の要因であり、ガバナンスの欠如こそがESG上の最大のリスクである」というロジックを展開する 10

彼らは、過剰な内部留保や低いROE(自己資本利益率)を放置する経営陣を「ガバナンス不全」と断じ、株主価値向上のための配当政策の変更や、取締役会の構成見直しを迫る。これは、形式的な環境対策などを求めるのではなく、企業価値の根幹に関わる資本政策を「ESG」の文脈で正当化し、他の機関投資家(特にパッシブ運用を行う大手機関)からの賛同を得やすくするための高度なレトリックとも解釈できる。

 

2.2 ターゲット選定の基準:バリュー投資の極致

GESの投資対象は、主に日本の中小型株(スモール・ミッドキャップ)に集中している。公開情報やこれまでの活動から、以下のような明確な選定基準が浮かび上がる 2

選定基準

分析と論理

PBR 1倍割れ

解散価値を下回る評価で放置されている企業。市場評価と本来の価値のギャップが大きく、アップサイドが狙える。

ネットキャッシュ・リッチ

時価総額に近い、あるいはそれを上回る現預金や有価証券を保有している企業。これを原資とした自社株買いや増配を要求しやすい。

ガバナンスの脆弱性

特定の創業家による支配が続いているが業績が伴っていない、あるいは社外取締役が機能しておらず経営陣への牽制が効いていない企業。

事業のポテンシャル

本業(コアビジネス)自体は競争力があるにもかかわらず、多角化や非効率な経営によって利益率が低迷している企業。

これらの条件を満たす企業に対し、GESはまず水面下での対話(エンゲージメント)を試みる。しかし、経営陣が変革を拒否した場合、彼らは躊躇なく「敵対的」なフェーズへと移行し、株主提案権を行使して経営陣の刷新を迫る。この「対話から対決へ」の移行プロセスの速さと、妥協なき姿勢がGESの最大の特徴である。

 

2.3 共同保有者・協調行動者との連携(ウルフパック戦術)

GESの活動において特筆すべきもう一つの点は、他のアクティビストファンドとの緩やかな連携、いわゆる「ウルフパック(狼の群れ)」戦術の巧みさである。例えば、日邦産業や東京コスモス電機の事例では、GES単独ではなく、別のアクティビストである「誠誠(Seisei)」や「NIPPON ACTIVE VALUE FUND(NAVF)」、「アセット・バリュー・インベスターズ(AVI)」といったファンドが同時期に株主として名を連ねている 1

各ファンドが法的な「共同保有者」の認定を避けつつ、実質的に同じ方向性(経営陣への圧力)を持って行動することで、会社側に対する圧力は倍加する。異なるファンドがそれぞれ取締役候補を提案することで、会社側は多方面からの防衛を余儀なくされ、一般株主の票も分散せずに「変化」を求める方向で結集しやすくなるのである。

 

第3章 門田康人氏:アクティビストから経営者への変貌

GESの戦略を立案し、実行に移している中心人物が門田康人氏である。彼のキャリアと実績は、現在のアクティビズムの手法に色濃く反映されており、彼個人の分析なくしてSAFSの活動を理解することは不可能である。

 

3.1 経歴:金融工学と企業再生のプロフェッショナル

門田氏のキャリアは、グローバルな投資銀行業務と、泥臭い企業再生・ハンズオン投資の現場を行き来するものであった 13

  • 初期キャリア(投資銀行時代): 2000年にUBSウォーバーグ証券(現UBS証券)に入社し、企業の合併・買収(M&A)や資金調達のアドバイザリー業務に従事。その後、ロンドン勤務を経て、ドイツ証券に移籍。ここでは資本財・化学セクターのカバレッジ責任者を務め、日本の製造業の財務構造や課題に対する深い知見を蓄積した。
  • ミドルキャリア(バイアウト・再生ファンド時代): 2015年、米系投資ファンドである「ローン・スター(Lone Star)」に参画。ローン・スターは不良債権投資や企業再生で知られるハードな交渉を行うファンドであり、ここでの経験が、後の妥協なき交渉スタイルの原型となったと考えられる。
  • アクティビストとしての独立(アスリード時代): 2019年、国内中小型株を対象としたアクティビストファンド「アスリード・キャピタル(Aslead Capital)」を共同創業。ここでは富士興産に対する敵対的TOB(株式公開買付)に関与するなど、より直接的な市場への働きかけを行った 15
  • 現在(SAFS~Axium): 2022年よりSAFSのCIOとしてGESを運用。そして2025年、自らの投資会社「Axium Capital(アクシアム・キャピタル)」を立ち上げ、東京コスモス電機の社長に就任するなど、投資家から経営者への脱皮を果たしている 16

 

3.2 経営哲学:「プロ経営者」としての覚悟

門田氏が他の多くのアクティビストと一線を画すのは、「批判するだけでなく、自ら経営を引き受ける」という点にある。従来、アクティビストは「経営のプロではない」として、取締役の派遣までは行っても、代表権を持って執行を行うことは避ける傾向にあった。しかし門田氏は、日本のサラリーマン経営者が資本効率を軽視し、現状維持に固執することを痛烈に批判し、自らがリスクを取って経営の舵取りを行うことで、企業価値を飛躍的に向上させることができると信じている 2

彼は「米国企業に比べて日本企業は資本を過小利用している」という確固たる信念を持っており、これを是正することが投資リターンのみならず、日本経済全体の活性化につながると主張している。この強い信念と行動力が、海外の投資家を引きつける要因となっている。

 

第4章 ケーススタディ:日本企業との攻防と成果

SAFS(GES)が関与した事例は、日本企業のガバナンスがいかに変容しつつあるかを鮮烈に物語っている。以下に主要な対立事例を詳細に分析する。

 

4.1 【東京コスモス電機(6772)】 経営権奪取のクーデター

2024年から2025年にかけての東京コスモス電機(Tocos)を巡る攻防は、日本のアクティビズム史における分水嶺となった。

  • 対立の構図:
    車載用可変抵抗器などのニッチな電子部品を手掛ける同社は、長年にわたりPBRが1倍を大きく割り込み、ネットキャッシュを抱え込みながらも成長投資に消極的な姿勢が見られた。GESはこの状況を打破すべく、門田氏を含む独自の取締役候補の選任を求めた。
  • 会社側の抵抗:
    会社側は、「GESは短期的な利益を追求するファンドであり、提案された候補者は当社の製造業としてのビジネスモデルを理解していない」と反論し、真っ向から対立した 13。会社側は現職取締役の再任案を提示し、株主総会は委任状争奪戦(プロキシファイト)の様相を呈した。
  • 2025年6月株主総会の衝撃的な結末:
    結果は、会社側の完全敗北であった。会社提案の取締役選任案(現職4名、新任1名)はすべて否決され、一方でGESが提案した候補者5名(門田氏含む)と、別のアクティビストである誠誠が提案した候補者3名の計8名が選任された 1。
  • 結果の分析:
    この結果は、以下の点で画期的であった。
  1. 経営陣の総入れ替え: 会社側の取締役が一人も残らず、アクティビスト側の候補者が取締役会を完全に掌握した。
  2. 一般株主の意思: 創業家や持ち合い株主以外の一般株主が、会社側ではなくアクティビスト側の提案を「合理的」と判断し、圧倒的な支持を与えたことを示唆している。
  3. 門田氏の社長就任: 総会後、門田氏は代表取締役社長に就任した。これは「物言う株主」が「経営者」へと変貌し、自らの手で改革を実行するフェーズに入ったことを意味する 17

 

4.2 【日邦産業(9913)】 複数ファンドによる包囲網

名古屋に拠点を置く商社、日邦産業に対する活動も、SAFSの戦略を象徴する事例である。

  • 提案内容:
    2025年の株主総会において、GESは5名の取締役選任に加え、買収防衛策の廃止を求める定款変更を提案した 8。同社は過去に買収防衛策を導入しており、これが経営陣の保身に使われているとの批判があった。
  • ウルフパックの形成:
    同社にはGES(保有比率約12%超)に加え、NAVF(約25%超)、誠誠(約13%)といった複数のアクティビストが大株主として存在していた 1。これらのファンドが連携して圧力をかけることで、会社側は極めて厳しい立場に追い込まれた。
  • 投票結果:
    GESが提案した5名の取締役候補は、いずれも約52.6%の賛成率を獲得し、可決された 1。また、誠誠が提案した3名の候補も同様に可決された。これにより、日邦産業の取締役会にもアクティビスト側の意向を反映したメンバーが送り込まれることとなった。この約52%という数字は、アクティビスト連合の保有比率に加え、一部の機関投資家や個人投資家が彼らの提案に賛同したことを示している。

 

4.3 【日本ビジネスシステムズ(5036)】 成長企業のガバナンス欠如への追及

ITサービス企業の日本ビジネスシステムズ(JBS)に対するエンゲージメントは、SAFSが伝統的な「オールドエコノミー」企業だけでなく、比較的新しい上場企業に対しても監視の目を光らせていることを示している。

  • 問題意識:
    JBSは2022年に上場したが、その後の株価パフォーマンスが低迷していた。GESは、同社が本業と関係の薄い不動産投資に多額の資金を投じていることや、中期経営計画を短期間で下方修正・取り下げたことを問題視し、「上場企業としての規律」が欠如していると批判した 10。
  • 2024年12月総会への提案:
    GESは以下の6議案を提案した。
  1. 剰余金の処分(配当性向の向上)。
  2. 配当政策の明確化に関する定款変更。
  3. 資本コストを意識した経営の義務付けに関する定款変更 10
  • 対立の現状:
    会社側はこれらの提案に反対を表明しており、三井住友DSアセットマネジメントなどの国内機関投資家も、一部の議案については「経営の自由度を過度に制約する」として反対票を投じたことが報告されている 19。しかし、GESが2%強の株式を保有し、声を上げ続けることで、経営陣に対して株価と資本効率への意識改革を迫る圧力となっていることは間違いない。

 

4.4 【NCホールディングス(6236)】 乱戦と対話の限界

コンベヤや立体駐車場を手掛けるNCホールディングスも、SAFSを含む複数のアクティビストのターゲットとなっている。

  • 複雑な利害関係:
    同社には、SAFS(GES)のほか、英国のAVI、米国のMIRI Capitalなどが参入しており、それぞれが異なる提案やTOB(公開買付)の提案を行うなど、極めて流動的な状況にある 20。
  • GESの主張:
    GESは2024年の総会に向け、中期経営計画の策定・開示と、株主との対話方針の改善を求める株主提案を行った。これは、同社が他の同業他社と比較して情報開示に消極的であり、株主との建設的な対話を拒否しているとの認識に基づいている 21。AVIの提案が過去に可決されるなど、株主の力が強い同社において、GESの提案は経営陣にとって無視できないプレッシャーとなっている。

 

第5章 将来展望:Axium Capitalの始動と市場への影響

2025年、門田氏はSAFSでの活動をさらに発展させる形で、新たな投資会社「Axium Capital(アクシアム・キャピタル)」を本格始動させた 16。これは、SAFSというプラットフォームの一利用者から、完全に独立した運用会社への進化を意味する。

 

5.1 Axium Capitalの野心的な目標

報道によれば、Axium Capitalは今後2年間で運用資産残高(AUM)を1000億円(約6億7800万ドル)規模に拡大することを目指している 16。現在は数百億円規模とされる運用資産を一気に拡大させるこの計画は、海外投資家からの日本株への関心が依然として高いことを裏付けている。

Axium Capitalの戦略は、SAFS時代と同様に「割安な日本の中小型株」をターゲットとしつつ、より大規模な資金を動員することで、時価総額がより大きな企業(ミッド・ラージキャップ)へのエンゲージメントも視野に入れている可能性がある。また、門田氏自身が東京コスモス電機の社長として実績を積むことで、Axium Capitalは「経営再建の実績を持つ投資会社」としてのブランドを確立しようとしている。

 

5.2 日本市場全体への波及効果

SAFSやAxium Capitalの活動は、単に彼らが投資する数社の問題に留まらない。

  • 経営者の意識変革: 「いつ自分の会社もターゲットにされるかわからない」という緊張感は、日本企業の経営者に資本効率や株価への意識を強制的に植え付ける効果がある。
  • M&Aの活性化: アクティビストが触媒となり、業界再編やMBO(マネジメント・バイアウト)、TOBが増加している。これは日本市場の新陳代謝を促す要因となる。
  • 一般投資家の覚醒: かつては「物言う株主」を異端視していた個人投資家や国内機関投資家が、彼らの提案の合理性を認め、賛成票を投じるケースが増えている。これは日本の資本主義が成熟期に入ったことを示している。

 

結論

 

スイスアジア・フィナンシャル・サービシズと、そのプラットフォーム上で展開されるGlobal ESG Strategy、そして門田康人氏の活動は、日本のアクティビズムが「要請」の段階から「実行」の段階へと移行したことを明確に示している。東京コスモス電機での完全勝利と門田氏の社長就任は、日本のコーポレートガバナンスにおける不可逆的な転換点であり、もはや「安定株主」や「持ち合い」に守られた聖域は存在しないことを証明した。

彼らの手法は強硬であり、摩擦を生むことも多いが、その根底にある「資本の効率的活用による企業価値の向上」という理念は、日本経済が直面する課題に対する一つの解であるとも言える。今後、Axium Capitalとしてさらに規模を拡大する彼らの動向は、日本の株式市場に関わるすべてのステークホルダーにとって、無視することのできない最重要ファクターであり続けるだろう。

補足資料:スイスアジア・フィナンシャル・サービシズ(SAFS)関連データ

 

以下の表は、本レポートで言及した主要なデータや関係性を整理したものである。

 

表1:SAFSおよびGESの主要関与銘柄とステータス(2024-2025年)



証券コード

企業名

セクター

関与形態・状況

主な要求・結果

6772

東京コスモス電機

電子部品

経営権掌握

取締役全員解任、門田氏が社長就任 17

9913

日邦産業

商社

主要株主 (12%超)

取締役5名選任可決、買収防衛策廃止要求 1

5036

日本ビジネスシステムズ

ITサービス

株主提案 (2%強)

剰余金処分、定款変更(資本コスト経営) 10

6236

NCホールディングス

機械

主要株主

中期経営計画開示、対話要求(AVI等と並列) 21

9696

ウィザス

教育

株主提案

買収防衛策関連の定款変更提案 23

 

表2:門田康人氏のキャリアパスと日本市場へのアプローチ

 

期間

所属組織

役割・活動内容

獲得した知見・スキル

2000-2009

UBS証券

投資銀行業務(東京・ロンドン)

グローバルなM&A手法、資本市場の論理

2010-2014

ドイツ証券

資本財・化学セクターカバレッジ

日本の製造業の深層理解、産業構造の分析

2015-2017

Lone Star

マネージング・ディレクター

不良債権投資、企業再生、ハードネゴシエーション

2019-2021

Aslead Capital

共同創業者

国内中小型株アクティビズム(富士興産TOB等)

2022-2025

SAFS (GES)

CIO (最高投資責任者)

経営陣刷新提案、ウルフパック戦術の展開

2025-現在

Axium Capital

創業者・CEO / 東京コスモス電機社長

自ら経営トップとして企業価値向上を実践

 

表3:SAFS(Global ESG Strategy)の投資手法の特徴

 

戦略的特徴

内容と狙い

ESGブランディング

ガバナンス(G)改革を「ESG」の文脈で語り、機関投資家の支持を取り付ける。

ハンズオン(経営関与)

外部からの批判に留まらず、取締役を派遣し、時には自ら経営を行う。

ウルフパック戦術

複数のアクティビスト(NAVF, Seisei等)と同時期に同一銘柄へ投資し、圧力を最大化する。

徹底したPBR是正

1倍割れ企業に対し、現預金の活用や非効率事業の売却を迫る。

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引用文献

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  2. Activist launches new Japanese equity fund targeting US investors - Hedgeweek, 11月 19, 2025にアクセス、 https://www.hedgeweek.com/activist-launches-new-japanese-equity-fund-targeting-us-investors/
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  4. Swiss-Asia Financial Services, 11月 19, 2025にアクセス、 https://www.swissasia-group.com/
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  8. 1 May 21, 2025 Company name: NIPPO LTD. Name of representative: Yasuchika Iwasa, Representative Director and President (Securit, 11月 19, 2025にアクセス、 https://www.nip.co.jp/english/news/.assets/20250523-2.pdf?y=2025&cat=
  9. Funds - Swiss-Asia Group, 11月 19, 2025にアクセス、 https://www.swissasia-group.com/funds/
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  12. From west to east: How shareholder activism has taken root in Asian markets - Diligent, 11月 19, 2025にアクセス、 https://www.diligent.com/resources/blog/how-shareholder-activism-has-taken-root-in-asian-markets
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  17. FY2025 Q1 Financial Results, 11月 19, 2025にアクセス、 https://www.tocos-j.co.jp/tocos-j-wp/wp-content/uploads/2025/08/ir20250808_5.pdf
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  20. Nels Hansen | Partner - White & Case LLP, 11月 19, 2025にアクセス、 https://www.whitecase.com/people/nels-hansen
  21. Shareholder Proposal to NC Holdings Co., Ltd. and Views on the Opinion of the Board of Directors | Global ESG Strategyのプレスリリース - PR TIMES, 11月 19, 2025にアクセス、 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000016.000135781.html
  22. Quarterly Update - Asset Value Investors, 11月 19, 2025にアクセス、 https://www.assetvalueinvestors.com/content/uploads/2024/07/AJOT-Q2-2024.pdf
  23. Activist fund calls for more dialogue with shareholders - The Star, 11月 19, 2025にアクセス、 https://www.thestar.com.my/business/business-news/2024/05/16/activist-fund-calls-for-more-dialogue-with-shareholders