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【IPO分析】アイ・グリッド・ソリューションズ(603A)― 再エネ×AI

こんにちは。さて、IPO案件の評価です。

 

2026年7月29日に東証グロースへ上場予定のアイ・グリッド・ソリューションズ(603A)です。

ざっくり言うと「再エネ×AI」の会社で、商業施設や物流倉庫の屋根の上に太陽光パネルをタダで載せて(オンサイトPPA)、そこで作った電気を売るのが本業。さらに自前のAIで「使い切れずに余った電気」を別の施設へ回す“余剰電力循環”という独自の仕組みを持っているのが面白いところです。

株主は、筆頭株主が伊藤忠商事(21.75%)。そこに関西電力、東急不動産、東京センチュリー、さらには著名個人投資家の片山晃さんがいますね。テーマ性(再エネ・GX・AI)と後ろ盾はIPO案件としては厚めですかね。

例によって目論見書ベースでClaude君に分析してもらいました。

では、レポートどうぞ。


アイ・グリッド・ソリューションズ

i GRID SOLUTIONS Inc. / 証券コード 603A / 東証グロース
上場日(売買開始)2026/7/29
想定発行価格710円
想定時価総額約247億円
吸収金額約87.7億円
想定PER / PBR15.5倍 / 3.0倍
主幹事野村證券(単独)
B
テーマ性と株主基盤は一流。ただし「重い・売出主体・薄い資本」の三重苦で需給が課題。
再エネ×AIの独自ストーリーと伊藤忠・関電・東急など強力な株主が魅力。一方で吸収額88億円の大型・VC売り主体・自己資本の薄さがブレーキ。初値は化けるより堅実に見るべき案件。

① 事業と成長性 A−

グリーンエネルギーがめぐる世界の実現」を掲げる再エネ×AIのプラットフォーマー。事業は2本柱。

  • GXソリューション事業:商業施設や物流倉庫の屋根上に太陽光を設置(オンサイトPPA)。顧客は初期負担ゼロ、契約は基本20年。FIT(固定価格買取制度)に依存しないのが特徴。
  • エナジートレーディング事業:上で生んだ再エネを法人・家庭へ供給する電力小売。

核となるのが独自AI「R.E.A.L. New Energy Platform」。約20年・8,000施設超で貯めた電力データを基に、屋根上で「余った電力」を高精度に予測して別の施設へ回す(余剰電力循環)のが他社にない強み。屋根の発電ポテンシャルを使い切れる。

収益モデルは3スキーム(アセットライト化が進行中)

スキーム 設備の所有 収益タイプ
PPAサービス 自社 ストック(20年の売電収入。粗利率39.2%)
インテグレーション 顧客 フロー(導入時に一括の開発・調達手数料)
アライアンス パートナー フロー+一部ストック(自社B/Sを使わず拡大)

主要KPIの伸び(GXソリューション事業)

オンサイトソーラー累計開発容量2022/6 → 2025/6
81→321MW(CAGR58%)
GX事業 売上総利益
5.3億→32.4億円(CAGR約83%)
全社 売上総利益
24.8億→60.6億円

※設置施設は全国1,400超、契約済の開発案件373件(2026/3末)。案件が中小型で全国分散しているため、特定案件の失敗で全体が傾きにくい構造。

◎ 強み

  • FIT非依存。森林伐採を伴わず屋根上で完結、設置余地が広い
  • 「余剰電力循環」を可能にするAIは模倣困難な独自資産
  • 筆頭株主・伊藤忠商事をはじめ関電・東急・東京センチュリーなど事業会社が株主=営業・調達・資金の強力なバックアップ
  • ストック(PPA)+フロー(アライアンス)の両輪で資本効率を改善中

△ 懸念

  • 電力小売(エナトレ)の販売量は減少傾向(8.9→4.4億kWh)
  • アライアンス最大手 TLC VPP合同会社への依存が上昇(売上比13.7%→21.6%
  • 設備・工事費の高騰、EPC(施工会社)依存、天候による四半期偏重(特に6月稼働ずれ込み)
  • 出力制御・インバランスなど電力事業特有の規制リスク

② 財務の健全性 B

売上高(25/6)229億円
営業利益(25/6)31億円
EBITDA(25/6)50.6億円
自己資本比率(25/6)15.8%

損益推移(単体ベース・百万円)

決算期 売上高 経常利益 純利益 EBITDA
2021/6(18期) 14,971 △1,949 △1,820
2022/6(19期) 18,858 △441 △499 436
2023/6(20期) 21,446 1,202 1,554 2,561
2024/6(21期) 19,256 1,144 △2,631 3,515
2025/6(22期) 22,939 2,389 1,595 5,059
2026/6 3Q累計 18,543 2,131 1,499
赤字・減益のカラクリ(要チェック)
・2021/6・2022/6の赤字 → 電力卸価格(JEPX)高騰と新規顧客獲得費用。2023年に料金を市場連動型へ改定して収益を安定化済み。
2024/6の純損失△26億円は特殊要因 → 子会社VPP Japan吸収合併に伴う「抱合せ株式消滅差損」の会計処理によるもの。経常利益は+11億円の黒字で、本業は崩れていない。

財政状態・キャッシュフロー

項目 2025/6 2026/6 3Q末
総資産 41,674 42,435
純資産 6,591 8,091
自己資本比率 15.8% 約19%
現金及び現金同等物 5,214
営業CF / 投資CF / 財務CF(25/6) +46.3億 / △47.6億 / +24.2億

自社で太陽光設備を持つPPAモデルゆえ、総資産417億に対し純資産66億と薄く、借入が大きい資産集約型。営業CFは出ているが設備投資(投資CF)で相殺され、フリーCFはほぼトントン。これは太陽光ストック事業の宿命で、成長=先行投資=借入というサイクル。アセットライト化(アライアンス)はこの構造を和らげる打ち手。

③ バリュエーション B

想定PER15.5倍
想定PBR3.0倍
ROE(25/6)27.6%
想定時価総額247億円

類似企業との比較(参考概算・2026年6月時点)

企業 市場 PER(目安) PBR(目安) 特徴
アイ・グリッド(603A) グロース 15.5倍 3.0倍 オンサイトPPA×AI
ウエストHD(1407) スタンダード 約7倍 約1倍 太陽光EPC・PPA
テスHD(5074) プライム 約10倍 約1.3倍 再エネEPC・電力供給
エフオン(9514) プライム 約9倍 約1倍 バイオマス発電
イーレックス(9517) プライム 変動大 約1倍 電力小売・バイオマス
PERは各社の直近株価・予想から筆者が概算した参考値で、正確な数値は各証券・株価情報サイトでご確認を。再エネ発電/EPC勢は資産・借入が重いためPER一桁・PBR1倍前後で評価されがち。それと比べると想定15.5倍・PBR3.0倍は見劣りするように映るが、GX事業のCAGR80%超とAIプラットフォームという成長プレミアムをどう織り込むかが評価の分かれ目。成長を信じれば妥当、ハードアセットとして見れば割高。

Forward(通期)の目安と初値予想

2026/6期は3Q累計で純利益14.99億円。下期(特に6月)に稼働が偏る季節性を踏まえると、通期は前期(15.95億円)を上回る公算。仮に通期20億円前後なら実績 forward PERは12倍台まで低下し、割安感が出る。

シナリオ 初値水準 対公開価格
弱気(需給負け) 700〜780円 ±0〜+10%
中立(メインシナリオ) 800〜950円 +13〜+34%
強気(テーマ買い) 1,000〜1,100円 +40〜+55%

※IPO情報サイトの読者予想は中央値1,000円・平均1,068円とやや強気。ただし吸収88億円の重さを踏まえ、本レポートは中立800〜950円をメインに置く。

④ 需給 C

募集の構造

区分 株数 備考
公募(新規発行) 2,689,000 資金は会社へ(設備投資・システム・人材)
売出(買取引受) 8,051,500 既存株主の換金。公募の約3倍
OA(オーバーアロットメント) 1,611,000 需給で追加
合計 12,351,500 吸収金額 約87.7億円

◎ プラス材料

  • 親引け:伊藤忠商事(最大50万株)・UntroD野村クロスオーバー(最大3億円)が一部を吸収
  • 欧州・アジア向け海外販売枠あり
  • 知名度のあるテーマ(再エネ・GX・AI)で機関投資家の関心は得やすい
  • 無配だが高ROE(27.6%)で成長投資に資金を回す合理性

△ マイナス材料

  • 吸収88億円はグロースでは大型。個人の需給では重い
  • 売出が主体=VC・事業会社のExit売り(関西電力・シグマクシスは全株売却、各種ファンドも放出)
  • ストックオプション残 約451万株(対発行済約14%)。行使価格60円・400円と深いイン・ザ・マネー=将来の潜在的売り圧力
  • 創業社長の持株が2.33%と薄く、VC色の強い資本構成

主要株主(上場前)

株主 比率 区分
伊藤忠商事 21.75% 筆頭・事業パートナー・貸株人
THE FUND投資事業組合 13.08% VC
ES&Gパートナーズ投資事業組合 7.95% VC
関西電力 7.12% 事業会社(今回全株売出)
シグマクシスHD 4.79% 事業会社(今回全株売出)
秋田智一(社長) 2.33% 創業者
片山晃 2.05% 著名個人投資家
ロックアップ:主要株主・役員・新株予約権者に対し上場日から180日(2027年1月24日まで)。価格による解除条項は確認した範囲で見当たらず期間固定だが、主幹事の同意で解除可能。180日後にVC・事業会社の保有分が市場に出てくる点は中期的な需給の重し。

⑤ 総合評価

観点 評価 ひとこと
事業と成長性 A− 独自AI×オンサイトPPA。成長率と株主基盤は一級品
財務の健全性 B 黒字化・増益基調だが自己資本薄く借入重い資産集約型
バリュエーション B PER15.5倍は成長込みで妥当、資産価値で見れば割高
需給 C 大型・売出主体・SO過多。個人需給は重い
総合 B 事業は魅力。ただし初値は「化ける」より「堅い」を想定

投資判断のポイント

  • 公募で取れたら参加価値あり。テーマ・株主・成長性が揃い、想定価格710円は forward PERで割高ではない。
  • ただし吸収88億の大型+売出主体+深いITMのSOで、初値が大きく跳ねるタイプではない。中立シナリオで800〜950円。
  • 上場後はTLC VPPへの依存度180日ロックアップ明け(2027年1月)の需給が中期の注目点。
  • 「再エネ×AIの成長株」として中長期で持つか、初値〜数日で利確するか、スタンスを決めて臨むのが吉。

リスクファクター

リスク 重要度
特定アライアンス先(TLC VPP)への売上集中(21.6%)
資産集約型ゆえの借入依存・自己資本の薄さ
設備・工事費高騰、EPC依存、四半期偏重
出力制御・インバランス等の電力事業規制
ロックアップ明け・SO行使による需給悪化
再エネ政策の変更(現状は追い風)

IPOスケジュール

仮条件決定 2026/7/10
ブックビルディング期間 2026/7/13〜7/16
公開価格決定 2026/7/17
申込期間 2026/7/21〜7/24
上場(売買開始) 2026/7/29

取扱証券会社

主幹事:野村證券(単独)/ 引受:みずほ証券・SBI証券・三菱UFJモルガン・スタンレー証券・SMBC日興証券・松井証券・中銀証券

企業概要

会社名 株式会社アイ・グリッド・ソリューションズ(i GRID SOLUTIONS Inc.)
証券コード / 市場 603A / 東証グロース
代表者 代表取締役社長 秋田 智一
所在地 東京都港区虎ノ門二丁目4番7号
決算期 6月
従業員数 153名(2026/5/31、平均年齢40.3歳・平均年収749万円)
事業内容 オンサイトPPA太陽光の開発・運営、AIエネルギープラットフォーム運営、蓄電池・EV等GXサービス、電力小売
資金使途 PPA設備投資・システム開発・人材採用等(公募+第三者割当で合計約27.7億円)
本レポートは目論見書(2026年6月25日提出の有価証券届出書)および公開情報に基づく分析であり、投資の推奨・助言を目的としたものではありません。類似企業のPER等は概算の参考値です。投資判断は自己責任でお願いいたします。
作成日:2026年6月28日


というわけで、総合評価はB。事業ストーリーというか方向性というか、はまぁ悪くはないですかねぇ。FITに頼らず屋根上で完結するし、余った電気をAIで回すという発想は他社がすぐ真似できるものでもない。GX事業の粗利がCAGR80%超で伸びているのもいいですね。

 

ただ、IPOの“買い”として見ると話は別で、引っかかるのは需給です。吸収金額88億円はグロースだとかなり重い部類で、しかも公募の3倍が「売出し」、つまりVCや事業会社の換金売り(関西電力やシグマクシスは全株手放す)。加えて行使価格60円・400円という激安ストックオプションが450万株も控えていて、想定価格710円から見れば全部含み益。180日のロックアップが明ける来年1月以降は、ここがじわじわ重しになりそうです。創業社長の持株が2.3%しかないVC色の強い資本構成も、好みは分かれるところ。

バリュエーションは想定PER15.5倍。再エネの発電・EPC勢(ウエストHDやテスHDあたり)がPER一桁で評価されがちなのと比べると一見高く見えますが、3Qの利益ペースで通期を引き直すとforward PERは12倍台まで下がる計算。成長プレミアムを信じるなら割高ではない、という微妙なライン。うーん。うーん。

 

個人的なスタンスとしては、公募で当たったら普通に参加。ただし初値で2倍3倍に化けるワクワク枠ではなく、中立シナリオで800〜950円(公開価格+15〜30%)あたりを淡々と狙う“堅実枠”として見ています。

 

本記事はあくまで個人の見解であり、特定の金融商品をお勧めするものではないのでそのへんは自己責任で!